現在日本で家を建てる際には、ほぼ全ての住宅で薬剤による防蟻処理が行われております。

家は国民の大切なお金を使う財産、担保価値が下がってはいけないので、昔は防蟻処理をしないと政府系の金融機関である金融公庫はお金を貸してくれませんでした。だからみんなする。そこに疑問を感じるようになったのは、ずっと後でした。

 

シックハウスが問題視されたのは一九九〇年頃からで、最初はホルムアルデヒドが悪役でした。特に換気の悪い新しいマンションを中心に被害が拡大し、厚生省が室内の科学物質に対し濃度指針を出し始めたのが一九九七年です。

その三年後、農薬系の化学物質にも室内濃度指針値が発表され、その中に日本の防蟻処理に使われ続けてきたクロルピリフォスやダンスの虫除けやトイレの芳香剤に使われるパラジクロロベンゼンなどが入ります。

そして二〇〇三年、今度は国土交通省がシックハウス法を施行。ホルムアルデヒドは使用制限、クロルピリフォスは使用禁止になりました。

そこで表でその二つの指針値を比べてください。

ホルムアルデヒドの指針値は100㎍、クロルピリフォスは1㎍。リスクが百倍だとわかります。

当時の住宅は農薬天国で、ダニ防止の畳の防虫シートでさえ、水田の50倍の濃度が使われていたと言われています。

当時、和室の畳下は畳がカビないように床下とつながっていましたから、クロルピリフォスが一番室内に侵入する場所、しかも畳の防虫剤と一緒に。

子供に対するクロルピリフォスのリスクはさらに大人の十倍。つまり、一階の畳の上に寝かせる子供や老人がとてつもなく危険だということです。

シックハウスの権威である北里大学の石川教授が当時、「皆さんが小学生の頃、クラスに牛乳瓶の底みたいな眼鏡を掛けた目が悪い子が数人いたでしょ?その子たちはテレビの見過ぎと怒られましたが、テレビの見過ぎなどで目は悪くなりません(石川教授は眼科)。その子たちの殆どは、有機リン系のシロアリ防蟻剤による被ばく被害です。」と日本建築会館で発言されたのを聞いています。

 

しかも残念なことにその危険は今も続いていて、

撒かれたクロルピリフォスはまだ床下に存在しますし、それよりも弱くなったけれども防蟻剤が未だに新築の床下に撒かれ続けています。

ホルムアルデヒドは解毒できますが、有機リンは体外排出できないので溜まり続け、神経毒なので神経に被害が出ます。そのリスクはホルムアルデヒドの比ではありません。

今では多くの工務店や建築家が健康住宅とか自然派住宅と称しています。中には天然成分なら良いとか勝手に言っている人もいますが、毒は毒なのです。ちゃんと勉強すれば、シロアリ防蟻剤を使った健康住宅など、あり得ないのです。