新築を検討している方から「家の中で一番気をつけるべき危険って何ですか?」と聞かれることがあります。
多くの方が最初に思い浮かべるのは、地震や台風、津波といった自然災害ではないでしょうか。
耐震性が大切だという思いは、私もその通りだと思います。
ただ、実際の相談現場で私がお伝えしているのは「毎年、家の中で最も多くの命を奪っているのはヒートショックです」ということです。
この記事では、百年の家®︎プロジェクトを主宰する私が、統計を取って分かったヒートショックの実態と、お風呂と脱衣所を暖める「命を守る基礎暖房」の考え方をお話しします。

家の中の危険を数字で比べてみると
家づくりは、家族を守るシェルターをつくることでもあります。ただ、何が危険かを知らずに建てると、守る先がずれてしまう可能性があります。そこで私は、過去のデータが残っている約100年分の死亡者数を、1年あたりに直して比べたことがあります。
地震:年間1,200人ほど
関東大震災から熊本地震までの約100年間で亡くなった方を100で割ると、1年あたり1,200人台になります。地震は家も倒れ、命と財産を一緒に奪うので、人生へのインパクトはとても大きい危険です。
熱中症:年間1,200人ほど
熱中症も、年間1,200人ほどと地震と同じくらいです。地球温暖化で暑くなっているので、今年は1,800人ほどに増えている可能性があり、上昇傾向にあります。
お風呂での事故:年間4,000人ほど
お風呂で亡くなる方は、毎年4,000人ほどと言われてきました。ただ、この数字の裏にはもう一つ話があります。

実際の相談でよくある「ヒートショックって、温度差で心臓がバクバクするやつですよね」という声
ヒートショックという言葉は、聞いたことがある方が多いと思います。「お風呂は暖かくて、脱衣所は寒い。その温度差で心臓がびっくりして死んでしまうやつ」という認識は、大体その通りです。
では、その人数はどれくらいでしょうか。2013年に東京の健康長寿の団体が全国の消防署にアンケートを送って調べたところ、推計で年間1万7,000人という数字が出ました。5年後の調査では1万9,000人になっています。
条件は、お風呂場と脱衣所に限る、65歳以上、24時間以内に死亡、の3つです。過去最大の交通事故死亡者数が1万6,000人ですから、それを上回る数字です。
この数字は実はもっと多い
レポートをよく読むと、消防署が駆けつけた時点で明らかに亡くなっている方はカウントされていません。その割合は消防署によって4割から6割です。真ん中の5割で考えると、1万7,000人ではなく3万4,000人になります。
私は、家の中で亡くなっている方は4万人ほどいると考えています。思い込みの正体は「寒いから仕方ない」という受け止め方です。実際は、家が寒いことが原因なので、設計で避けられる危険です。

専門家として私が考える、お風呂と脱衣所を暖めるべき3つの理由
1. 原因は「家の寒さ」で、暖かい場所では起きにくいから
ヒートショックは、服を脱いで寒くなり、熱いお湯に入って血管が広がり、上がる時にまた急に変化する、という流れで起こります。高血圧の方などで起きやすく、原因はいろいろありますが、結局は家が寒いことが根っこにあります。夏はほぼ起きず、冬にたくさん起きるのがその証拠です。
2. 小型のヒーターでは対策になりにくいから
脱衣所用の暖房器具も売られていますが、多くは高価で、十分な暖房能力があるとは言えません。小さなセラミックヒーターは、つけた10分20分は熱線で暖かくても、壁などが冷えたままなので、根本的な対策にはなりにくいのです。電気代もかかります。
3. 安全装置のように、簡単に付けられるから
車はシートベルトやエアバッグ、自動ブレーキが普及して、交通事故死亡者数は1万6,000人から2,000人になりました。家にも同じ発想が必要です。脱衣所にエアコンを最初から付けるだけなら、投資は数万円です。お風呂と脱衣所が暖まれば、そこで亡くなる方はほぼいなくなると私は考えています。
「寝室にエアコンを付けるのと同じように、脱衣所にも必ず付ける」。これが私の主張です。そして家の性能を上げることで、脱衣所のエアコン1台で、その余熱が家全体を暖めるところまで目指せます。これが、百年の家®︎プロジェクトで20年ほど取り組んでいる「命を守る基礎暖房」です。

読者の不安に答える:ヒートショック対策のQ&A
Q. すでに建てた家(リフォーム)でも間に合いますか?
間に合います。お風呂場と脱衣所だけなら、6畳用のエアコンを入れれば十分に暖まります。暖房としてもこれが一番安い方法です。電気代がもったいないという声もありますが、100歳まで生きられる命が今なくなる方が、ずっともったいないと私は思います。
Q. 電気代が気になって、エアコンのスイッチを入れなくなりませんか?
その通りで、付けただけではスイッチが入りません。熱中症で運ばれる高齢の方も、エアコンがあるのに電気代を理由につけていないことがあります。だから、脱衣所のエアコンを入れると家中が余熱で暖まる、というメリットがある設計にしておくことが大切です。
まとめ:お風呂と脱衣所が暖かい、命を守る家づくりを

耐震や断熱ももちろん大切です。そのうえで、まずお風呂場と脱衣所を暖かい家にしてほしいと私は思っています。ヒートショックは今夜起こりうる身近な危険で、65歳未満でも起きます。私の友人も、今年50歳前半で亡くなりました。
これから新築を考える方は、設計の段階でお風呂と脱衣所を暖める仕組みを入れておけば済む話です。今お住まいの方も、まずはエアコンで暖めることから始めてみてください。
動画では、この話をさらに詳しくお伝えしています。ぜひ見てくださいね。





