注文住宅でキッチンを考えている方から、「憧れはあるけれど、実際の使いやすさはどうなのか」とよく質問されます。
世間では「キッチンには立派な換気扇が必須で、においも油も外に出してくれる」と思われています。
実際の相談現場で私がお伝えしているのは、「換気扇に頼る前に、においと油が広がらない間取りと設備を選ぶ」ということです。この記事では、アイランドキッチン、コンロ、食洗機の3つを中心にお話しします。
よくあるキッチンの考え方と選択肢
キッチンづくりで、多くの方が最初に思い浮かべるのは次のような形です。
- 壁付けキッチン:片側が壁にくっついた形。マンションでもよく見かけます。
- ガスコンロ+レンジフード:コンロの上に大きな換気扇を付ける形。火力が魅力です。
- コンロ・IHを天板に埋め込む:調理台の中にコンロのスペースをしっかり確保する形です。
どれも一般的な選び方です。ただ、暮らしてみると「思っていたのと違った」という声が出やすい部分でもあります。
実際の相談でよくある「換気扇を回しているのに、においが残る」という悩み

相談でこんな話をよく聞きます。
「家族で焼肉をした夜は、レンジフードを回してから寝ます。それなのに、翌朝起きると焼肉のにおいが残っているんです」
この「回しているのににおいが残る」という声が、思い込みの正体です。換気扇は「全部吸い出してくれるもの」と思われがちですが、実際は、焼肉でもモコモコ調理でも、完全には抜け切らないことが多いのです。
しかも、レンジフードの掃除を楽にしようと、油を吸着するフィルターを手前に付ける方もいます。すると吸い込む力は、感覚的に10分の1ほどに落ちます。吸えなかった分の煙や油は、家の中に広がります。
新築から5年ほど経つと、コンロの後ろにある食器棚のガラスが、油でベトベトになっているお宅もよくあります。
専門家として私が「換気扇に頼らないキッチン」を勧める3つの理由

1. アイランドキッチンにすると、毎日の動きがラクになる
1つ目は、アイランドキッチンです。壁にくっつけず、キッチンの両側から回り込める形にします。
壁に片側をつけると、後ろに入るときが一方通行になります。袋小路のようになって、人がすれ違うたびに「ごめんね」と体をずらすことになります。アイランドなら、それが起きません。
広いスペースがないとできない、と思われがちですが、人が1人通れる幅があれば大丈夫です。ご夫婦で並んで洗い物をするときも、動きの自由度が大きく変わります。私たちも、ほぼ100%に近い形でアイランドにしています。
これほど便利なのに、アイランドが多くない理由があります。壁から離すと、コンロの上のレンジフード(大きな換気扇)も一緒に空中へ延長しなければならないからです。ファンを空中に浮かせる工事は大がかりで、お金もかかります。おしゃれなレストランで、ダクトが天井を這っているのを見たことはありませんか。あれが、まさにその工事です。
私たちがアイランドにできるのは、レンジフードを付けていないからです。換気扇は、実はいらないのです。
においと油を広げない工夫は、2つあります。
- フライパンにステンレスメッシュの蓋をする:水蒸気は通しますが、油は通しません。発生源で油の飛び散りを止められます。揚げ物のときにも使えます。
- ガスコンロをやめてIHにする:ガスコンロは鍋の外側にも火が回り、空気が温まって上昇気流が起きます。そこに油が乗って、天井や後ろの壁に付きます。IHは鍋の中だけを熱するので、この上昇気流が出にくくなります。
この2つを合わせると、何年使っても汚れにくいキッチンになります。ガスコンロだとレンジフードの設置が必要ですが、IHにすれば設置義務がなくなります。付けるか付けないかは、選べるようになります。

お魚を焼くときのモコモコも、下のグリルを使えば焼き切って燃焼するので、ほとんど出ません。いちばんおいしいのは、庭に出て炭火で焼くことです。
では、においはどうするのか。私たちは、24時間換気でしっかり換気しています。2003年以降の新築は、2時間で家中の空気をすべて入れ替えるルールになっています。建築基準法で、1時間に0.5回の換気をするという決まりです。
焼肉をしても、本来は2時間ごとに空気が入れ替わるはずです。においが残るなら、レンジフードではなく、家の換気が機能しているかを見直す必要があります。
火力を楽しみたいガス派の方は、レンジフードを付ける選択もできます。ただし、壁から離れるほどダクトが伸びて、吸う力は落ちます。その場合は、業務用のような大きな換気扇で、しっかり設計することをお勧めします。

2. コンロは据え置きにして、天板を広い作業台にする
2つ目は、もう一歩進んだ考え方です。IHさえ、作り付けにしないという選択です。
キッチンには、シンク、作業スペース、コンロの順に並ぶものが多いです。そのうちコンロやIHが占める幅は、75cmほどあります。意外に大きなスペースです。
でも、実際にはどうでしょうか。お湯を沸かすなら電気ケトルが早いですし、唐揚げなら唐揚げ機、低温調理なら低温調理器が便利です。レンジでチンして魚に焼き目がつく家電もあります。コンロの出番は、少しずつ減ってきています。
そこで、IHは引き出しにしまっておきます。使うときだけ出してコンセントに差し、終わったらしまいます。すると75cmがすべて作業台になり、料理の広がりがまるで変わります。電子レンジも、1台だと渋滞しがちなので、2台あった方が便利かもしれません。
据え置きのIHなら、1個8000円ほどで買えます。壊れても、すぐに買い替えられます。埋め込み式は、壊れると何万円もかかりますし、いいものだと10万円を超えることもあります。
共働きのご家庭で、3口のコンロを同時に使っている場面はあまり見かけません。火が見えるのが好きな方は、無理にやめなくて大丈夫です。ご家庭ごとのご要望がありますので、そこは調整していきます。

3. 60cmの食洗機を埋め込む
3つ目は、食洗機です。私は、60cmのものを埋め込むことを絶対にお勧めしています。
国産によくあるのは45cmのサイズです。60cmは海外メーカーの食洗機に多いサイズで、大きいぶん何でも入ります。昔の人が手で磨いていたプロペラファンも、中華鍋も入ります。
高温でしっかり洗えるので、手に優しくありません。そのかわり、油汚れもきれいに落ちます。高いグラスを持っている方も、ピカピカになります。たくさん入るので、1日1回回せば足ります。
洗い物の時間がいらなくなり、スイッチを入れるだけで済みます。共働きのご家庭は特に助かります。誰かがやらなくてはいけない仕事を、食洗機が引き受けてくれるのです。

読者の不安に答える:キッチンの換気に関するQ&A
Q. 換気扇がなくて、焼肉のにおいは大丈夫ですか?
回しても、においは抜け切らないことが多いです。ですから、蓋やIHで発生を抑えることが大切です。その上で24時間換気がきちんと働けば、2時間で家中の空気が入れ替わります。焼肉をベランダでされる方も多く、それも気持ちのいい方法です。
Q. ガスコンロでアイランドにするのは難しいですか?
可能です。ただ、壁から離れるほどダクトが伸びて、吸う力は弱くなります。ガスの火力を楽しみたい場合は、業務用のような大きな換気扇で、油が広がらないようにしっかり設計します。お掃除の手間も増えるので、趣味として楽しむ気持ちで選ぶのがよいと思います。
まとめ:においも油汚れも、最初から広げない家づくりを
キッチンは、壁から離して両側から通れるようにすると、毎日の使いやすさが大きく変わります。そしてIHと蓋で、においと油を発生源で抑えれば、レンジフードに頼らない選択ができます。
コンロを据え置きにして天板を広く使うことや、60cmの食洗機で洗い物の時間をなくすことも、暮らしを楽にしてくれます。
設計の段階で原因を取り除いておく。それが、百年の家®︎プロジェクトの考え方です。キッチンを注文するときには、ぜひ参考にしてください。





