一日の終わりに、ベッドやソファーで寝転んだとき、真上に何が見えるか思い浮かべてみてください。
天井がフラットでスタイリッシュ、おしゃれなイメージがあるので、選ぶ方はとても多いと思います。

実際の相談現場で私がお伝えしているのは、
「私たちはダウンライトを使いません」ということです。
この記事では、寝る前の目、暮らしの明るさ、天井裏の3つの面から、後悔しない照明の考え方をお話しします。
照明は、見積もりに入っていないことが多い
まず前提として、照明は建築の見積もりに入っていないことが多いです。
- 建売や分譲の家:照明器具は入居後に自分で買って付けるのが一般的です。
- ローコスト系:器具が外されていて、付ける場所だけが用意されていることがよくあります。
- ダウンライト:天井に穴を開けて埋め込む器具で、天井面がフラットになり、天井の奥から光るのでスタイリッシュに見えます。
私たちが家づくりで大切にしているのは、写真で見たときのかっこよさよりも、住んだときにいかに不快でないかということです。写真の姿は、自宅になった瞬間に見ることがなくなります。
寝る前の目に、強い光が直接入っていませんか

ホテルのベッドの真上にダウンライトが付いていることがあります。私は年間200泊ほどするのですが、これはどうなのかと毎回思います。
ベッドで最後に電気を消すとき、人は上を見ます。すると、真上にダウンライトの光源が目に入ります。上を向く場面は、ベッドかソファーに寝転んだときです。
今のダウンライトはLEDなので、白熱電球に比べて光る面積がとても小さく、同じ明るさでもまぶしさが強く感じられます。
寝ようとして副交感神経が上がってくる時間に、光がパーンと目に刺さります。寝付きが悪くなる原因になりやすいと私は考えています。
睡眠の専門の先生も、寝室は本当に暗くしなければいけないと言っています。ダウンライトの強い光源は、睡眠を妨げる方向に働くと思います。
パソコンやスマホで疲れた目に、毎晩いちばんリラックスしたい時間に強い光を当てる設計は、見直してほしいと思っています。
実際の相談でよくある「天井が明るい方が安心」という声
「天井に照明がある方が部屋全体が明るくなるし、そういうものだと思っていました」という声もよく聞きます。
どの部屋にも天井に照明を付ける、というのが日本の家の当たり前になっています。
でも、天井を照らして何か良いことがあるのかと考えると、実はあまり理由がありません。
部屋の真ん中に付けているだけ、ということが多いのです。
照明のプランを見ると、ダウンライトだらけで、明るければいいという前提で作られていることもよくあります。でも、必要なのは「目的の場所が明るいこと」です。

- 勉強:お子さんの机にデスクライトがあれば十分です。
- 料理:手元が明るければいいので、ペンダントやスポットで足ります。
- 読書・作業:ベッドサイドのライトや、作業用の照明を使います。
作業のときは、きちんと測れて見えた方がいいので、適切な明るさの照明を使います。一方、暮らしの中では、暗い方が良いと私は考えています。
光源を見せない照明で、暮らしの明るさをつくる

私たちは、光源が見えない間接照明を、自分の目線より下に使います。壁から光らせる、梁の上から光らせる。それだけで柔らかい明るさになり、雰囲気も良くなります。
ソケットがなければ、後から天井の真ん中に器具を付けることもありません。
ソケットなしで、柔らかい明るさで全然十分です。
家に帰ったときも、薄暗い中に
「今日も電気が付いているな、みんな起きているな」と感じられる程度がちょうどいいと感じます。
慣れると、本当にそれで十分です。
寝室は特に大切です。日本の家は、子供部屋も寝室も変わらないことが多いのですが、私たちは寝室をムードのある空間として作ります。ベッドの下を光らせるなど、光らせる場所も自由です。
これは家の性能やコスパの話ではなく、夫婦の時間や家族の幸せの話です。
ベッドサイドで座って話す時間が楽しみになる家は、とても素敵だと思います。
ダウンライトの穴と、掃除できない天井裏の話
もう一つ、ダウンライトを使わない理由があります。目には見えない天井裏の話です。
ダウンライトは、天井に穴を開けて器具をはめ込みます。
下から見るとぴったり収まって見えますが、周りには確実に隙間があります。

暖房をすると、部屋の空気は温まって膨張し、軽くなって天井側へ向かいます。天井面にはずっと圧力がかかっている状態です。
そこに穴があれば、ハウスダストを含んだ空気が天井裏へ入っていきます。
昔の白熱電球のダウンライトは90度以上になるほど熱を持つので、周りに上昇気流が起こり、より積極的に空気が上がっていきました。
天井裏に入ったハウスダストは、間仕切り壁の中の空洞にも広がります。天井裏は掃除ができません。
お母さんが床を一生懸命掃除していても、天井裏には溜まり続けます。
私はリフォームの現場で、天井を開けた瞬間にものすごい量のほこりを何度も見てきました。ダウンライトのある家は、尋常ではないほこりだった、というのが私の実感です。
溜まるだけならまだしも、問題は逆流することです。台所の換気扇のスイッチを入れた瞬間がそうです。
換気扇は1時間に400立方メートルほどの空気を外に出します。家の中の空気を外に捨てるので、どこかから同じ量の空気が入ってこなければなりません。その入り口が、ダウンライトの周りやコンセントの隙間です。

これはイメージですが、スイッチを入れた瞬間に、天井裏のほこりが隙間から降りてくることがあります。
お子さんのハウスダストアレルギーのために掃除を頑張っているお母さんが、お子さんのために料理を作ろうとしてスイッチを入れる。それが本意のはずがありません。
私たちはレンジフードも付けませんので、こうしたことが起こりません。
空気中に漂うものは、換気で外へ出す。それが健康を守る基本だと考えています。
最近のLEDには、天井に穴を開けず、薄く貼り付けるタイプもあります。
その場合は話が別です。私がお伝えしているのは、天井に穴を開けて埋め込む使い方についてです。
読者の不安に答える:照明に関するQ&A
Q. 間接照明だけだと、暗くて寂しくなりませんか?
食卓だけ明るいと、それ以外が暗くて寂しく感じる方もいます。
でも、目的のある場所が明るければ暮らしは成り立ちます。
暗いのは悪いことではなく、目に優しい状態です。本を読むならデスクライトやベッドサイドライトを使えば十分です。
Q. 電球の色や明るさは変えられますか?

今はLEDなので、スマホで電球色から昼白色までグラデーションで変えられます。
Alexaなどに話しかけて操作することもできます。
スタンドライトも、Alexa対応のものが安く手に入ります。
日本の家に少ないのがスタンドライトで、欧米ではモデルハウスにも必ず置かれ、部屋の隅に一人掛けの椅子とスタンドライトがセットになっています。
天井の真ん中の1灯に頼らず、スタンドライトを使う方法もおすすめです。
まとめ:暮らしやすさを最初から設計する家づくりを
天井に穴を開けて埋め込むダウンライトは、ほこりの通り道を増やし、寝る前の目に強い光を届けます。照明は、おしゃれかどうかよりも、住んだときに不快でないかで選ぶものだと私は考えています。
光源が見えない間接照明を目線より下に使い、必要な場所だけにデスクライトやスタンドライトを置く。そんなふうに、最初の設計で暮らしを整えておくと、毎日の睡眠も、家族の時間も、ずっと心地よくなります。
家づくりの照明は、「どこが明るければいいか」から考えてみてください。動画でも詳しくお話ししていますので、ぜひご覧ください。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
◆注文住宅マイスター:杉浦一広のプロフィール◆
百年の家®️プロジェクト代表
株式会社 ブルーシップ 代表取締役社長
20年で250社以上の工務店のコンサルティング実績を持つ
ただ一人の高気密高断熱コンサルタント
2004年 老舗木材屋の執行役員時代に、百年の家®️を発足。
2008年 独立起業 地域から支持されハウスメーカーより信頼される
「次世代工務店の育成」をライフワークとする。
アマゾン電子書籍 26部門1位&ベストセラー
『100年後悔しない家づくり』
◯百年の家®️プロジェクトとは?◯
世界トップレベルの高気密高断熱技術と暮らしやすさの両立を目的とした
地元工務店とユーザーのマッチング・ネットワークです。
「百歳まで謳歌する家づくり百年の家®️」を提唱。
百年の家®️メンバーが、全国地域で活躍しています。





